9月下旬、大分過ごしやすくなってきました。朝晩は冷えることもあるので、皆様におかれましては体調にご自愛いただき、お過ごしください。
 さて、今回は令和4年度診療報酬改定の中でも、[調剤]というカテゴリーにおいて、簡単ではありますが、少しご紹介をさせていただこうと思います。

【主な内容】

  • 調剤とは
  • 薬局薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進
  •   ⅰ.薬局薬剤師業務の評価体系の見直し
       ⅱ.退陣業務の評価の拡充

過去の診療報酬改定に関するブログはコチラ

令和4年度診療報酬改定に関して~不妊治療の保険適応~
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅴ-重症化予防、後発医薬品等使用推進、療養・就労両立支援
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅳ-質の高い精神医療の評価:②外来に関 わる精神医療の評価/③在宅等に係る精神医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅳ 質の高い精神医療の評価 ①入院に関わる精神医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅲ がん・疾病・難病対策の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅲ(小児・周産期)~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅱ-慢性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅱ-回復期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅰ-高度急性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅰ-急性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~外来Ⅱ編~
令和4年度診療報酬改定とは?~外来Ⅰ編~
令和4年度診療報酬改定とは?~訪問看護編~
令和4年度診療報酬改定とは?~在宅医療編~
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療②~
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療①~

◇調剤とは

 調剤とは、処方箋に基づいて医薬品を揃え、患者に交付する業務。 医師・歯科医師・獣医師から発行された処方箋が正しいかを確認し、薬剤を計数・計量して患者に薬剤を交付するまでの一連の流れを総称した言葉です。 基本的には薬剤師の独占業務ですが、医師・歯科医師・獣医師であれば、自ら処方した処方箋に限定して調剤を行うことができます。

◇薬局薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換の推進

ⅰ.薬局・薬剤師業務の評価体系の見直し

〇薬局・薬剤師業務の評価体系の見直し
 対物業務及び対人業務を適切に評価する観点から、薬局・薬剤師業務の評価体系について見直しを行い、[薬剤調製良]、[薬剤管理料]、[服薬管理指導料]の新設がなされました。

〇調剤料の見直し
 調剤料を廃止し、これまで調剤料として評価されていた薬剤調製や取り揃え・監査業務の評価を新設し、内服薬の調剤料についての処方日数に応じた段階的な評価の見直しが行われました。薬剤調製料として、「1 内服薬(浸煎薬及び湯薬を除く)」は1剤につき一律24点となっています。

〇自家製剤加算の見直し
 自家製剤加算について、錠剤を分割した場合の評価が見直され、注6の文言に、「予製剤による場合又は錠剤を分割する場合は」といった文言が追加されました。

〇薬局における対人業務の評価体系の見直し
 調剤料を廃止し、これまで調剤料として評価されていた処方内容の薬学的分析、調剤設計等と、これまで薬剤服用歴管理指導料として評価されていた薬歴の管理等に係る業務の評価体系として新たに「調剤管理料」が新設されました。[1:内服薬(浸煎薬及び湯薬を除く。)を調剤した場合(1剤につき)]では、イ:7日分以下の場合(4点)、ロ:8日分以上14日分以下の場合(28点)、ハ:15日分以上28日分以下の場合(60点)、ニ:29日分以上の場合(60点)、[2:1以外の場合(4点)]となっています。
 次に、複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方された患者が、薬局を初めて利用する場合又は2回目以降の利用において処方内容が変更された場合であって、当該患者が服用中の薬剤について必要な薬学的分析を行った場合の評価として、「調剤管理料調剤管理加算」が新設されました。具体的には、イ:初めて処方箋を持参した場合(3点)、ロ:2回目以降に処方箋を持参した場合であって処方内容の変更により薬剤の変更又は追加があった場合(3点)が算定できるようになっています。
 また、薬剤服用歴管理指導料として評価されていた服薬指導等に係る業務評価の見直しとして、「服薬管理指導料」が新設されました。具体的には、1:原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合(45点)、2:1の患者以外の患者に対して行った場合(59点)、3:特別養護老人ホームに入所している患者に訪問して行った場合(45点)、4:情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合[イ:原則3月以内に再度処方箋を持参した患者に対して行った場合(45点)]、[ロ:イの患者以外の患者に対して行った場合(59点)]の算定となっています。

〇薬局における対人業務の評価の充実
 外来服薬支援料の見直しとして、多種類の薬剤が投与されている患者又は自ら被包から取り出して服用することが困難な患者に対して、医師の了解を得た上で、薬剤師が内服薬の一包化及び必要な服薬指導を行い、当該患者の服薬管理を支援した場合の評価として、「外来服薬支援料1」及び「外来服薬支援料2」が新設されました。またそれに併せて調剤料の一包化加算の廃止が実施されました。具体的な点数として、外来服薬支援料1は185点の算定、外来服薬支援料2では、イ:[42日分以下の場合]投与日数が7又はその端数を増すごとに34点を加算して得た点数、ロ:[43日分以上の場合]240点の算定となっています。

ⅱ.対人業務の評価の拡充

〇調剤後薬剤管理指導加算の見直し
 地域において医療機関と薬局が連携してインスリン等の糖尿病治療薬の適正使用を推進する観点から、調剤後薬剤管理指導加算についての見直しが行われ、加算点数が30点から60点へ増点いたしました。

〇医療的ケア児に対する薬学的管理の評価
 保険薬局において、医療的ケア児である患者に対して、当該患者の状態に合わせた必要な薬学的管理及び指導を行った場合の評価として、「小児特定加算」が新設されました。服薬管理指導料として加算する場合は350点を、在宅患者訪問薬剤管理指導料として加算する場合は450点をそれぞれ算定できます。

〇服薬情報等提供料の見直し
 服薬情報等提供料について、医療機関からの求めに応じて、薬局において入院予定の患者の服用薬に関する情報等を一元的に把握し、必要に応じて持参した服用薬の整理を行うとともに、医療機関に対して、当該患者の服薬状況等について文書により提供した場合の評価として、「服薬情報等提供料3」が新設されました。3月に1回に限り50点を算定できるようになっています。

〇服用薬剤調製支援料2の見直し
 服用薬剤調製支援料2について、減薬等の提案により、処方された内服薬が減少した実績に応じた評価に変更されました。具体的には、イ:別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険薬局において行った場合(110点)、ロ:イ以外の場合(90点)の算定となっています。

〇服薬管理指導料の特例
 かかりつけ薬剤師以外の薬剤師が、かかりつけ薬剤師と連携して必要な指導等を実施した場合の特例的な評価として、「服薬管理指導料の特例」が新設されました。かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合に関して、59点が算定できるようになっています。

終わりに

 今回は[調剤]のカテゴリーにおいて、令4年度診療報酬改定のお話をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。調剤に関しては私も経験が全くないので、あまり深堀することができませんが、対物中心から対人中心へという流れになっているのは門前薬局を見ていても感じます。近年では、在宅医療の割合が大きくなってきており、薬剤師さんも訪問をしてお薬を届けるようなケースが増えてきています。そして、お薬を渡すだけでなく、薬剤の基本的説明から必要な指導、そして継続的な把握、残薬への対応等、お薬に関してのトータルサポートを実施しています。今後更に在宅医療を受ける患者は増えていくと考えられています。そうなると、より対人中心の考え方というのが必要不可欠になり、対応ができるかできないかで調剤薬局の命運が分かれていきそうな気がしますね。(S)

 

この記事を書いた人


坂本 裕紀
経歴 / 看護大学卒業。OP室、ICU及びHCU、離島医療、訪問診療、訪問看護、クリニック立ち上げを経験し、現職。
資格 / 看護師、保健師、上級心理カウンセラー