8月下旬に入り、朝晩は少しずつ過ごしやすくなりましたが、日中はまだまだ暑く、注意が必要な時期が続いております。歩くときはなるべく日陰を利用するなど、皆様暑さには十分注意してお過ごしください。
さて、今回は令和4年度診療報酬改定の中でも、[不妊治療の保険適用]というカテゴリーにおいて、簡単ではありますが、少しご紹介をさせていただこうと思います。
【主な内容】
- 不妊症とは
- 一般不妊治療に係る評価の新設
- 生殖補助医療に係る評価の新設
過去の診療報酬改定に関するブログはコチラ
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅴ-重症化予防、後発医薬品等使用推進、療養・就労両立支援
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅳ-質の高い精神医療の評価:②外来に関 わる精神医療の評価/③在宅等に係る精神医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅳ 質の高い精神医療の評価 ①入院に関わる精神医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅲ がん・疾病・難病対策の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅲ(小児・周産期)~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅱ-慢性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅱ-回復期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅰ-高度急性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅰ-急性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~外来Ⅱ編~
令和4年度診療報酬改定とは?~外来Ⅰ編~
令和4年度診療報酬改定とは?~訪問看護編~
令和4年度診療報酬改定とは?~在宅医療編~
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療②~
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療①~
◇不妊症とは
不妊症とは、避妊せずに性行為を続けているのにも関わらず、約1年妊娠しないことを指します。原因は様々ですが、病気によって排卵の働きや、卵管・子宮・精巣など妊娠に係る臓器が病気によって悪くなっていることなどが関係していると言われています。
◇一般不妊治療に係る評価の新設
〇一般不妊治療に係る医療技術等の評価①
一般不妊治療の実施に当たり必要な医学的管理及び療養上の指導等を行った場合の評価として、「一般不妊治療管理料」が新設されました。対象患者は入院中の患者以外の患者であって、一般不妊治療を実施している不妊症の患者と定義されています。点数は250点で、3月に1回算定できるようになっています。
〇一般不妊治療に係る医療技術等の評価②
不妊症の患者に対して、人工授精を実施した場合の評価として、「人工授精」が新設されました。詳しい算定要件は長くなってしまうため割愛させていただきますが、1820点が算定できるようになっています。
◇生殖補助医療に係る評価の新設
〇生殖補助医療に係る医療技術等の評価①
生殖補助医療の実施に当たり必要な医学的管理及び療養上の指導等を行った場合の評価として、「生殖補助医療管理料」が新設されました。具体的な算定要件は長くなってしまうため割愛させていただきますが、当管理料には1と2があり、入院中の患者以外の患者であって、生殖補助医療を実施している不妊症の患者に対して、1は300点、2は250点をそれぞれ月に1度算定できるようになっています。
〇生殖補助医療に係る医療技術等の評価②
不妊症の患者に対して、排卵を実施した場合の評価として、「排卵術」が新設されました。点数は3200点となっており、また採取された卵子の数に応じて、イ(1個の場合:2400点)、ロ(2個から5個までの場合:3600点)、ハ(6個から9個までの場合:5500点)、ニ(10個以上の場合:7200点)をそれぞれ1回につき所定点数に加算できます。
次に、不妊症の患者に対して、調節卵巣刺激療法における治療方針の決定を目的に実施される、抗ミュラー管ホルモン測定に係る評価として、「抗ミュラー管ホルモン(AMH)」が新設されました。算定要件としては、不妊症の患者に対して、調節卵巣刺激療法における治療方針の決定を目的として、血清又は血漿を検体としてEIA法、CLEIA法又はECLIA法により測定した場合に、6月に1回に限り600点を算定できるようになっています。
〇生殖補助医療に係る医療技術等の評価③
不妊症の患者に対して、体外受精又は顕微授精を実施した場合の評価として、「体外受精・顕微授精管理料」が新設されました。詳しい算定要件は割愛させていただきますが、体外受精は4200点、顕微授精の場合は、イ(1個の場合:4800点)、ロ(2個から5個までの場合:6800点)、ハ(6個から9個までの場合:10000点)、ニ(10個以上の場合:12800点)をそれぞれ算定できるようになっています。
〇生殖補助医療に係る医療技術等の評価④
体外受精又は顕微授精により作成した受精卵の培養等の管理に係る評価として、「受精卵・胚培養管理料」が新設されました。1(1個の場合:4500点)、2(2個から5個までの場合:6000点)、3(6個から9個までの場合:8400点)、4(10個以上の場合:10500点)を算定できるようになっています。
〇生殖補助医療に係る医療技術等の評価⑤
受精卵の培養により作成された初期胚又は胚盤胞の凍結保存等の管理に係る評価として、「胚凍結保存管理料」及び「胚凍結保存維持管理料」が新設されました。胚凍結保存管理料では、イ(1個の場合:5000点)、ロ(2個から5個までの場合:7000点)、ハ(6個から9個までの場合:10200点)、ニ(10個以上の場合:13000点)が導入時に算定でき、胚凍結保存維持管理料では1年に1度3500点が算定できるようになっています。
〇生殖補助医療に係る医療技術等の評価⑥
不妊症の患者に対して、胚移植を実施した場合の評価として、「胚移植術」が新設されました。新鮮胚移植の場合は7500点、凍結・融解胚移植の場合は12000点を算定できるようになっており、患者の治療開始日の年齢が40歳未満の場合は、患者1人につき6回に限り、40歳以上43歳未満である場合は、患者1人につき3回に限り算定できるようになっています。
〇男性不妊治療に係る医療技術等の評価①
不妊症の患者に対して、精巣内精子採取術の適応の判断を目的にY染色体微小欠失検査を実施した場合の評価として「Y染色体微小欠失検査」が新設されました。算定要件として、Y染色体微小欠失検査は、不妊症の患者であって、生殖補助医療を実施しているものに対して、PCR-rSSO法により、精巣内精子採取術の適応の判断を目的として実施した場合に、患者1人につき1回に限り算定できるものとなっており、点数は3770点となっています。
〇男性不妊治療に係る医療技術等の評価②
不妊症の患者に対して、精巣内精子採取術を実施した場合の評価として、「精巣内精子採取術」が新設されました。単純なものにおいては12400点を、顕微鏡を用いたものでは24600点を算定できるようになっています。
終わりに
今回は[不妊治療の保険適用]のカテゴリーにおいて、令4年度診療報酬改定のお話をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。不妊症について少しだけ補足して今回は終わりにさせていただこうと思います。
昨今では、不妊症の治療を受ける人が増えてきていると言われています。国立社会保障・人口問題研究所の2021年出生動向基本調査では、約4.4組に1組の夫婦が不妊症の検査及び治療を受けているというデータが出ています。WHOが行った、不妊症の7273組のカップルを調査した結果では、女性のみに原因がある(41%)、男女ともに原因がある(24%)、男性のみに原因がある(24%)、原因不明(11%)となっており、女性だけでなく、男性にも原因が多いということが見てとれます。男女ともに生殖器は非常にセンシティブな部分であり、何か違和感がある場合にはすぐに検査を行った方がいいと思われます。また、不妊治療をしても必ず妊娠や出産ができるわけではありません。加齢とともに妊娠率は低くなり、流産などのリスクも高まるため、心配や不安に思うことがあれば、早めに夫婦で医療機関への相談や、不妊治療を検討することが大切になってきますね。(S)
この記事を書いた人

坂本 裕紀
経歴 / 看護大学卒業。OP室、ICU及びHCU、離島医療、訪問診療、訪問看護、クリニック立ち上げを経験し、現職。
資格 / 看護師、保健師、上級心理カウンセラー
