6月に入り、梅雨空の中あまりぱっとしない天気が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?雨は嫌いという方も多くいらっしゃると思いますが、この季節だからこそ見える風景も多くあります。そういったものを見つけて、少しでも日々が楽しくなるように過ごしていきたいですね。
さて、今回は令和4年度診療報酬改定の中でも、[個別改定事項Ⅳ-質の高い精神医療の評価 ②外来に関わる精神医療の評価_③在宅等に係る精神医療の評価]というカテゴリーにおいて、簡単ではありますが、少しご紹介をさせていただこうと思います。
【主な内容】
- 通院・在宅精神療法の見直し
- 精神疾患を有する者の地域定着に向けた多職種による支援の評価
- 認知症専門診断管理料の見直し
- 児童思春期精神科専門管理加算の見直し
- 依存症患者に対する医療の充実
- かかりつけ医等及び精神科医等が連携した精神疾患を有する者等の診療に係る評価の新設
- 救急患者精神科継続支援料の見直し
- 継続的な精神医療の提供を要する者に対する訪問支援の充実
過去の診療報酬改定に関するブログはコチラ
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅳ 質の高い精神医療の評価 ①入院に関わる精神医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅲ がん・疾病・難病対策の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅲ(小児・周産期)~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅱ-慢性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅱ-回復期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅰ-高度急性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅰ-急性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~外来Ⅱ編~
令和4年度診療報酬改定とは?~外来Ⅰ編~
令和4年度診療報酬改定とは?~訪問看護編~
令和4年度診療報酬改定とは?~在宅医療編~
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療②~
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療①~
◇通院・在宅精神療法の見直し
通院精神療法及び在宅精神療法について、精神保健指定医が診療を行った場合とそれ以外に区分し、それぞれの評価が設けられました。点数としては、60分以上(初診のみ)で、指定医の場合は560点、それ以外は540点になり、30分以上では指定医の場合410点、それ以外は390点、30分未満では指定医の場合330点、それ以外は315点となっています。
◇精神疾患を有する者の地域定着に向けた多職種による支援の評価
精神疾患患者の地域定着を推進観点から、精神科外来への通院及び重点的な支援を要する患者に対して、多職種による包括的支援マネジメントに基づいた相談・支援等を実施した場合について、療養生活継続支援加算が新設されました。詳しい算定要件及び施設基準は割愛させていただきますが、月一回一年を限度に350点を算定できます。
◇認知症専門診断管理料の見直し
認知症専門診断管理料2の対象となる医療機関に、連携型の認知症疾患医療センターが追加されました。基幹型又は地域型の場合は変わらず300点、連携型の場合280点の算定となっています。
◇児童思春期精神科専門管理加算の見直し
児童・思春期精神医療の外来診療について、2年以上診療が継続している場合についても算定できるように見直しが実施されました。それに伴い、2年以上診療を継続して行っている場合は300点の加算算定ができるようになりました。
◇依存症患者に対する医療の充実
・依存症入院医療の充実
重度アルコール依存症入院医療管理加算について、入院治療が必要な薬物依存症の患者を対象患者に追加するとともに、名称が依存症入院医療管理加算に変更されました。
・依存症外来医療の充実
依存症集団療法について、アルコール依存症の患者に対する集団療法の実施に係る評価が追加されました。アルコール依存症の場合は300点が算定でき、要件としては、アルコール依存症の患者であって、入院中の患者以外の者に対して集団療法を実施した場合に、週1回かつ計10回に限り算定することができます。
◇かかりつけ医等及び精神科医等が連携した精神疾患を有する者等の診療に係る評価の新設
孤独・孤立による影響等により精神障害又はその増悪に至る可能性が認められる患者に対して、かかりつけ医等及び精神科又は心療内科の医師等が、自治体と連携しながら多職種で当該患者をサポートする体制を整備している場合について、新たな評価が実施されました。こころの連携指導料(Ⅰ)では、月1回350点が算定でき、対象患者は地域社会からの孤立の状況等により、精神疾患が増悪するおそれがあると認められるもの又は精神科若しくは心療内科を担当する医師による療養上の指導が必要であると判断されたものとなっています。こころの連携指導料(Ⅱ)では、月1回500点が算定でき、区分番号B005-12に掲げるこころの連携指導料(Ⅰ)を算定し、当該保険医療機関に紹介されたものとなっています。
◇救急患者精神科継続支援料の見直し
救急患者精神科継続支援料について、より充実した人員配置を求める観点から、精神保健福祉士の配置を必須化するとともに、更なる評価が実施されました。入院中の患者の点数が435点から900点へ増加し、入院中の患者以外の点数も135点から300点へ増加しました。詳しい施設基準は割愛させていただきますが、算定要件としては、入院中の患者については、入院した日から起算して6か月以内の期間に週1回に限り算定するとなっており、入院中の患者以外の患者については、退院後、電話等で継続的な指導等を行った場合に、退院後24週を限度として週1回に限り算定できます。
◇継続的な精神医療の提供を要する者に対する訪問支援の充実
在宅において継続的な精神医療の提供が必要な者に対して適切な医療を提供する観点から、精神科在宅患者支援管理料について、ひきこもり状態にある患者や精神疾患の未治療者、医療中断者等が対象患者に追加されました。
終わりに
今回は[個別改定事項Ⅳ-質の高い精神医療の評価 ②外来に関わる精神医療の評価_③在宅等に係る精神医療の評価]のカテゴリーにおいて、令4年度診療報酬改定のお話をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
前回のブログにも少し記載させていただきましたが、精神科は医療分野の中でも特殊な科になります。私の経験上、こころの病気というのは、一度罹ってしまうとなかなか元には戻りません。罹る前の生活に戻るのには、人にもよりますが相当な時間が必要です。そもそも高血圧や糖尿病等の一般的な疾病とは違い、数値を見て正常なのか異常なのかを判断することができません。なので、お薬を飲んだとしても、心の状態が良くなったかどうかを数値化して判断することはできないのです。接した時の表情や、言動、仕草などをよく観察し、その人の心の状態を測らなければいけません。これは非常に難しいことです。また、再発も容易に起こります。フラッシュバックという言葉がありますが、良くなるのには時間がかかり、悪くなるのは一瞬です。こころの病気は非常にセンシティブであり、その人のこころに寄り添いながらゆっくり関わっていくことが重要です。
こころの病気に関しては、私の経験談をもう少し詳しく話させていただきたいのが、長くなってしまうため、また別の機会にさせていただきます。それでは、今回はこのあたりで失礼させていただきます。(S)
この記事を書いた人

坂本 裕紀
経歴 / 看護大学卒業。OP室、ICU及びHCU、離島医療、訪問診療、訪問看護、クリニック立ち上げを経験し、現職。
資格 / 看護師、保健師、上級心理カウンセラー
