今年早くも1月が終わり、2月となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。2月は入学試験や国家試験などがあり、人生の分岐点を通過される人も多いのではないかと思います。自身にとって悔いが残らないよう、最後まであきらめずにやり切っていきましょう。
 さて、今回は令和4年度診療報酬改定の中でも、[入院Ⅱ-慢性期入院医療の評価]というカテゴリーにおいて、簡単ではありますが、少しご紹介をさせていただこうと思います。

  • 慢性期とは
  • 療養病棟入院基本料の見直し
  • 障害者施設等入院基本料等の見直し
  • 緩和ケア病棟入院料の見直し
  • 有床診療所における評価の見直し

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令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅱ-回復期入院医療の評価編~
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◇慢性期とは

 慢性期(chronic phase)とは、病状は比較的安定していますが、治癒が困難で病気の進行は穏やかな状態が続いている時期を指します。再発の予防や、体力の維持を目指し、長期にわたって治療を続けていく期間です。

◇療養病棟入院基本料の見直し

 医療区分の見直しとして、療養病棟における中心静脈栄養を実施している状態にある患者について、患者の接触機能又は嚥下機能の回復に必要な体制を有していない場合においては、療養病棟入院基本料の医療区分3の場合の点数に代えて、医療区分2の場合に相当する点数を算定することとすると改定されました。
 次に、療養病労入院基本料(注11に規定する経過措置)の評価の見直しとして、療養病棟入院基本料の注11に規定する経過措置(所定点数の100分の85)について、医療療養病床に係る医療法上の人員配置基準の経過措置の見直し方針及び届出状況を踏まえ、評価を見直した上で、経過措置期間を2年延長するとされました。改定後は、療養病棟入院料2のそれぞれの所定点数の100分の75に相当する点数を算定することになっています。また、療養病棟入院基本料(注11に規定する経過措置)におけるリハビリテーションについて、疾患別リハビリテーション料を算定する患者に対して、FIM(機能的自立度評価法)の測定を月に1回以上行っていない場合は、1日につき2単位まで出来高での算定となり、医療区分2の患者であって、疾患別リハビリテーション料を算定する患者に対して、FIMの測定を行っていない場合においては、医療区分1の場合に相当する点数を算定することとすると見直されました。

◇障害者施設等入院基本料の見直し

 患者の状態に応じた入院医療の評価として、障害者病棟に入院する重度の意識障害を有さない脳卒中の患者について、療養病棟入院料の評価体系を踏まえた評価に見直しが行われ、特殊疾患病棟入院料についても同様の扱いとなりました。具体的には、障害者施設等入院基本料として、イ:7対1入院基本料又は10対1入院基本料に関しては、医療区分2の患者に相当するものは1345点、医療区分1の患者に相当するものは1221点、ロ:13対1入院基本料に関しては、医療区分2の患者に相当するものは1207点、医療区分1の患者に相当するものは1084点、ハ:15対1入院基本料に関しては、医療区分2の患者に相当するものは1118点、医療区分1の患者に相当するものは995点と改定されました。特殊疾患入院医療管理料では、医療区分2の患者に相当するものは1717点、医療区分1に相当するものは1569点へと改定となっています。

緩和ケア病棟入院料の見直し

 緩和ケア病棟入院料に関して、患者の状態に応じた入院医療の提供を更に推進する観点から、疼痛の評価等を実施した場合の評価として、緩和ケア疼痛評価加算が新設されました。緩和ケア病棟入院料を算定する病棟に入院している疼痛を有する患者に対して、緩和ケアに関するガイドラインを参考として疼痛の評価その他の療養上必要な指導を行った場合に緩和ケア疼痛評価加算として、1日につき100点を所定点数に加算となっています。また、加算の新設にあわせて緩和ケア病棟入院料の評価の見直しも行われています。具体的な点数として、緩和ケア病棟入院料1のイ:30日以内の期間に関しては5107点、ロ:31日以上60日以内の期間に関しては4554点、ハ:61日以上の期間に関しては3350点となっており、緩和ケア病棟入院料2のイ:30日以内の期間に関しては4870点、ロ:31日以上60日以内の期間に関しては4401点、ハ:61日以上の期間に関しては3298点となっています。全て改定前の点数に比べて100点ずつ減点されていますね。

有床診療所における評価の見直し

 有床診療所一般病床初期加算及び救急・在宅等支援療養病床初期加算について、急性期医療を担う他の医療機関からの患者の受入れと、在宅からの患者の受入れを区別して評価するとされました。具体的な内容としては、まず有床診療所一般病床初期加算が、有床診療所急性期患者支援病床初期加算と有床診療所在宅患者支援病床初期加算に分けられました。有床診療所急性期患者支援病床初期加算は、急性期医療を担う他の保険医療機関の一般病棟から転院した患者については、転院した日から起算して21日を限度として150点の加算、有床診療所在宅患者支援病床初期加算は、介護老人保健施設、介護医療院、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム等又は自宅から入院した患者に対し、治療方針に関する患者又はその家族等の意思決定に対する支援を行った場合に入院した日から起算して21日を限度として300点の加算となっています。次に、救急・在宅等支援療養病床初期加算が、有床診療所急性期患者支援療養病床初期加算と有床診療所在宅患者支援療養病床初期加算に分けられました。有床診療所急性期患者支援療養病床初期加算は、急性期医療を担う他の保険医療機関の一般病棟から転院した患者については、転院した日から起算して21日を限度として300点の加算、有床診療所在宅患者支援療養病床初期加算は介護老人保健施設、介護医療院、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム等又は自宅から入院した患者に対し、治療方針に関する患者又はその家族等の意思決定に対する支援を行った場合に、入院した日から起算して21日を限度として350点の加算となっています。また、慢性維持透析患者を受け入れる病床の確保を推進する観点から、有床診療所療養病床入院基本料を算定する診療所において慢性維持透析を実施した場合についての新たな評価として、慢性維持透析管理加算が新設されました。点数に関しては1日あたり100点となっています。
 次に、専門機関との連携分娩管理の評価として、地域連携分娩管理加算の新設が実施されました。妊産婦に対するより安全な分娩管理を推進する観点から、有床診療所において、医療機関が総合周産期母子医療センター等と連携して適切な分娩管理を実施した場合について、1日につき3200点(8日まで)を加算できるようになりました。

終わりに

 今回は[入院Ⅱ-慢性期入院医療の評価]のカテゴリーにおいて、令4年度診療報酬改定のお話をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。慢性期医療は、急性期や回復期とはまた違った特徴があります。それは、他のステージに比べて圧倒的に高齢者が多いことです。そのため、加齢に伴う全身の諸臓器の機能低下や、生理機能の低下におけるさまざまな疾患、認知症などが複合的に現れます。複数の疾患の治療を続けながら、増悪することを防いでいくことが重要です。また、患者様が病気と向き合って生活していけるために、社会的背景や生活面の考慮をしながら支援を続けていくことも大切な面となります。医療従事者として患者様に寄り添い、その人がその人らしく生きていける時間を長く確保していくことが、慢性期医療の根幹にあると言えるでしょう。(S)

 

この記事を書いた人


坂本 裕紀
経歴 / 看護大学卒業。OP室、ICU及びHCU、離島医療、訪問診療、訪問看護、クリニック立ち上げを経験し、現職。
資格 / 看護師、保健師、上級心理カウンセラー