12月になり、今年ももう残すところあと一か月となりました。皆様にとって今年はどんな年になりましたでしょうか。やり残したこと、後悔のないよう、今年あと一か月を全力でやり切っていきましょう。
さて、今回は令和4年度診療報酬改定の中でも、[入院Ⅰ-高度急性期入院医療の評価]というカテゴリーにおいて、簡単ではありますが、少しご紹介をさせていただこうと思います。
- 高度急性期とは
- 重症患者対応体制強化加算の新設
- 重症患者初期支援充実加算の新設
- 高度急性期医療の質を高める取組に係る評価
- 重症度、医療・看護必要度の見直し
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◇高度急性期とは
高度急性期とは、急性期の患者様に対し、状態の早期安定化に向けて診療密度が高い医療を提供する機能区分となります。具体的には、救急病棟や、ICU、HCU、NICU等での医療提供が上記に値します。患者様は重症度が非常に高く、24時間の継続的な看護が必要になります。
◇重症患者対応体制強化加算の新設
特定集中治療室等における重症患者の対応体制の強化に係る評価が行われ、集中治療領域における重症患者対応の強化及び人材育成の重要性を踏まえ、特定集中治療室等における重症患者対応に係る体制を確保している場合の評価として、重症患者対応体制強化加算が新設されました。点数区分は三つに分かれていて、3日以内の期間であれば750点、4日以上7日以内の期間であれば500点、8日以上14日以内の期間であれば300点の算定となっています。
◇重症患者初期支援充実加算の新設
重症患者等に対する支援に係る評価が行われ、集中治療領域において特に重篤な状態の患者及びその家族等に対する支援を推進する観点から、患者の治療に直接関わらない専任の担当者である「入院時重症患者対応メディエーター」が、当該患者の治療を行う医師・看護師等の多職種とともに、当該患者及びその家族等に対して、治療方針・内容等の理解及び意向の表明を支援する体制を整備している場合の評価として、重症患者初期支援充実加算が新設されました。算定要件及び点数としては、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者(第3節の特定入院料のうち、重症患者初期支援充実加算を算定できるものを現に算定している患者に限る。)について、入院した日から起算して3日を限度として所定点数に300点(1日につき)を加算することとなっています。
※入院時重症患者対応メディエーターとは、当該患者及びその家族等の同意を得た上で、当該患者及びその家族等が治療方針及びその内容等を理解し、当該治療方針等に係る意向を表明することを、当該患者の治療を行う医師・看護師等の多職種とともに、支援を行う者を指す。
◇高度急性期医療の質を高める取組に係る評価
救命救急入院料等に係る要件の見直しとして、急性血液浄化又は、体外式心肺補助(ECMO)を必要とする患者や臓器移植を行った患者について、長期の集中治療管理が必要となる実態を踏まえ、早期から患者の回復に向けた取り組みを十分に行っている救命救急入院料及び特定集中治療室管理料における当該患者に係る算定上限日数が延長されました。急性血液浄化(腹膜透析を除く)又は体外式心肺補助(ECMO)を必要とする患者は25日、臓器移植(心臓、肺、肝臓に限る)を行った患者は30日となっています。また、バイオクリーンルーム設置による治療室内における感染症の発症抑制に係る実態を踏まえ、バイオクリーンルームの設置に関する要件の見直しが行われました。施設基準が「原則として、当該治療室内はバイオクリーンルームであること」から、「当該治療室内に、手術室と同程度の空気洗浄度を有する個室及び陰圧個室を設置することが望ましいこと」へ改定されました。
次に、救急搬送診療料の見直しとして、入院患者を転院搬送する際に、救急搬送診療料が算定可能な場合の明確化が実施されました。今までは、「当該保険医療機関の入院患者を他の保険医療機関に搬送した場合、救急搬送診療料は算定できない」との文言でしたが、より細かくなりました。改定後は「救急搬送診療料は、救急用の自動車等に同乗して診療を行った医師の所属する保険医療機関において算定する」、「入院患者を他の保険医療機関に搬送した場合、救急搬送診療料は算定できない。ただし以下のいずれかに該当する場合においては、入院患者についても救急搬送診療料を算定することができる:(ア)搬送元保険医療機関以外の保険医療機関の医師が、救急用の自動車等に同乗して診療を行った場合/(イ)救急搬送中に人工心肺補助装置、補助循環装置又は人工呼吸器を装着し医師による集中治療を要する状態の患者について、関係学会の指針等に基づき、患者の搬送を行う場合」となっています。また、ECMO等を装着した重症患者に対する搬送中の専門性の高い診療の必要性を踏まえ、関係学会の指針等に基づき、重症患者搬送チームが搬送を行った場合について、重症患者搬送加算が新設されました。対象患者は、「救急搬送中に人工心肺補助装置、補助循環装置又は人工呼吸器を装着し、医師による集中治療を要する状態の患者」となっており、1800点の加算が取れるようになっています。
人工呼吸の評価の見直しとして、人工呼吸を実施する患者について、開始からの日数に応じた評価とするとともに、自発覚醒トライアル及び自発呼吸トライアルを実施した場合の評価が新設されました。今までは、人工呼吸の状態が5時間を超えた場合(1日につき)819点の算定でしたが、改定後は、人工呼吸の状態が5時間を超えた場合(1日につき)、14日目までが950点、15日目以降が815点の算定となりました。また、覚醒試験加算(100点/1日につき)と、離脱試験加算(60点/1日につき)が新しく新設されています。
ECMO(体外式膜型人工肺)を用いた診療等に係る評価の見直しとして、処置に係る評価と、治療管理に係る評価の新設が実施されました。具体的には、体外式膜型人工肺として、初日は30150点、2日目以降から3000点が1日につき算定できるようになっています。また、体外式膜型人工肺管理料として、7日目までが4500点、8日目以降14日目までが4000点、15日目以降が3000点を1日につき算定できるようになりました。
最後に、早期からの回復に向けた取組への評価として、職種要件の見直しとして、早期離床・リハビリテーションに係る職種に言語聴覚士が追加されました。また、具体的な算定要件は長くなってしまうため割愛させていただきますが、早期栄養介入管理加算について、経腸栄養の開始の有無に応じた評価に見直されています。また、早期からの回復に向けた取組について、算定対象となる治療室の見直しが行われました。今までは、早期離床・リハビリテーション加算及び早期栄養介入管理加算の対象は特定集中治療室管理料1~4となっていましたが、今回の改定で、「救命救急入院料1~4」「ハイケアユニット入院医療管理料1、2」「脳卒中ケアユニット入院医療管理料」「小児特定集中治療室管理料」においても加算算定対象となりました。
◇重症度、医療・看護必要度の見直し
高度急性期の入院医療の必要性に応じた適切な評価を行う観点から、特定集中治療室用の重症度、医療・看護必要度について、必要度の判定に係る評価項目及び判定基準の見直しが行われました。改定後では、A項目から「心電図モニターの管理」が廃止となり、B項目は全て廃止となりました。また今回の改定に伴い、基準点数が「A得点4点以上かつB得点3点以上」から「A得点3点以上」へと変更となっています。
次に、救命救急入院料1及び3における重症度、医療・看護必要度の評価票の見直しとして、高度急性期入院医療を必要とする患者の状態に応じた適切な評価を行う観点から、救命救急入院料1及び3における、重症度、医療・看護必要度の測定に用いる評価票について、特定集中治療室の評価票から、ハイケアユニット用の評価票に変更となっています。
終わりに
今回は[入院Ⅰ-高度急性期入院医療の評価]のカテゴリーにおいて、令4年度診療報酬改定のお話をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。前回お話させていただいた、急性期医療よりも、更に医療必要度が高いのが高度急性期です。私も、看護師になって初めての臨床がHCUとICUの混合ユニットだったため、その現場がどういうものなのかはよく知っています。呼吸器や循環器系疾患の急性増悪、脳卒中、OP後の状態観察など様々な患者様が入院しており、急変が起こることも珍しくありません。一分一秒を争う中、全ての医療従事者が連携し、患者様のケアを行うあの空間こそが、まさに高度急性期医療であると思います。新型コロナ感染症の影響もあり、高度急性期医療機能区分を持つ病院は非常に大変な思いをされながら日々の医療に努めていると思います。そういった病院を評価する制度や、支援する取組が今後益々良くなっていくことを切に願います。
この記事を書いた人

坂本 裕紀
経歴 / 看護大学卒業。OP室、ICU及びHCU、離島医療、訪問診療、訪問看護、クリニック立ち上げを経験し、現職。
資格 / 看護師、保健師、上級心理カウンセラー
