11月中旬に差し掛かり、日増しに寒さが身にしみる季節となってきましたね。これから本格的に冬の季節へと突入していきます。この季節は寒暖差からくる自律神経の乱れや、寒さによる極度な筋緊張から病気や怪我をしやすい時期となっておりますので、皆様どうかご自身の体調管理には重々お気をつけてお過ごしください。
さて、今回は令和4年度診療報酬改定の中でも、[入院Ⅰ-急性期入院医療の評価]というカテゴリーにおいて、簡単ではありますが、少しご紹介をさせていただこうと思います。

  • 急性期とは
  • 急性期充実体制加算の新設
  • 一般病棟用重症度、医療・看護必要度の見直し
  • 急性期医療の質を高める取組に係る評価

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◇急性期とは

まず、病院の医療機能として、高度急性期、急性期、回復期、慢性期と、大まかにこの4つの機能区分に分類されています。患者様の状態に応じて、どういった医療が必要なのかをトリアージし、入院病床へと割り当てられます。今回は、急性期医療に関してお話させていただきますので、急性期について最初に少しご紹介させていただきます。

急性期とは、端的に言うと病気に罹患し始めた時期のことを指します。病気や怪我による症状が急激に現れるため、身体的及び精神的負担の大きい時期になります。急性期は状態の経過及び変動が早い時期であるため、患者様の状態をしっかり把握していくことが重要です。数時間でも状態が全く異なっていることがあるため、的確な判断と報告、迅速な処置が求められる時期となります。

◇急性期充実体制加算の新設

高度かつ専門的な急性期医療の提供体制に係る評価の見直しが行われ、新型コロナウィルス感染症の感染拡大において果たした医療機関の役割等も踏まえ、手術や救急医療等の高度かつ専門的な医療及び高度急性期医療の提供に係る体制を十分に確保している場合の評価として、急性期充実体制加算と精神科充実体制加算が新設されました。細かい算定内容は割愛させていただきますが、急性期充実体制加算では、一日につき7日以内の期間であれば460点、8日以上11日以内の期間であれば250点、12日以上14日以内の期間であれば180点をそれぞれ急性期一般入院料Ⅰ又は特定一般病棟入院料に加算することができます。また、精神科充実体制加算では、一日につき30点を加算することができるようになりました。

次に、総合入院体制加算の見直しが行われ、手術の実施件数の実態を踏まえ、総合入院体制加算の施設基準として年間実績を求めている手術に「人工心肺を使用しない冠動脈、大動脈バイパス移植術」が追加されました。また、総合入院体制加算の施設基準である外来を縮小する体制を確保しているものとして、紹介受診重点医療機関を含むこととするとともに、実績に係る要件の見直しが実施されています。

◇一般病棟用重症度、医療・看護必要度の見直し

急性期入院医療の必要性に応じた適切な評価を行う観点から、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の見直しを行うとともに、これに併せ簡素化を図る観点も踏まえ、急性期一般入院料を7段評価から6段評価に再編されています。再編された後の点数としては、入院料1が1650点、入院料2が1619点、入院料3が1545点、入院料4が1440点、入院料5が1429点、入院料6が1382点となっています。

重症度、医療・看護必要度の評価項目の見直しとして、急性期入院医療の必要性に応じた適切な評価を行う観点から、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度について、「心電図モニターの管理」の項目の廃止、「注射薬剤3種類以上の管理」への変更、「輸血や血液製剤の管理」の項目評価の点数を2点へ変更となっています。その他施設基準のパーセンテージの見直しも実施されていますが、長くなってしまうため今回は割愛させていただきます。

また、重症度、医療・看護必要度Ⅱを要件とする対象病院の拡大として、重症度、医療・看護必要度の測定に係る負担軽減及び測定の適正化をさらに推進する観点から、急性期一般入院料1(許可病床数200床以上)を算定する病棟について、重症度、医療・看護必要度Ⅱを用いることが要件化されました。

◇急性期医療の質を高める取組に係る評価

術後患者に対する質の高い疼痛管理を推進する観点から、術後疼痛管理チームによる疼痛管理について、術後疼痛管理チーム加算の新設が実施されました。詳しい算定要件に関しては割愛させていただきますが、術後疼痛管理チーム加算として、一日につき100点を算定することができます。

次に、薬剤師による周術期の薬物療法に係る医療安全に関する取組の実態を踏まえ、質の高い周術期医療が行われるよう、手術室の薬剤師が病棟の薬剤師と薬学的管理を連携して実施した場合の評価として、周術期薬剤管理加算が新設されました。こちらは、マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式麻酔を行った際に、75点を加算算定できます。

また、周術期における適切な栄養管理を推進する観点から、管理栄養士が行う周術期に必要な栄養管理において、周術期栄養管理実施加算の新設がなされました。全身麻酔を実施した患者において、1手術に1回、270点が加算算定できます。

最後に、患者様の重症度に応じた質の高い救急医療を適切に評価する観点から救急医療管理加算の見直しが行われました。対象患者の状態や算定要件に関しては長くなってしまうため割愛させていただきますが、点数は救急医療管理加算1が950点から1050点へ、救急医療管理加算2が350点から420点へ増点となっています。

終わりに

今回は[入院Ⅰ-急性期医療の評価]のカテゴリーにおいて、令4年度診療報酬改定のお話をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。急性期医療及び、次回お話させていただく予定の高度急性期医療は、患者様の命を守る要となる医療機能です。現場では常に最先端の医療技術や医療知識が求められ、患者様の命を守るために奔走する医療スタッフ達がいます。今回はそういった医療現場の体制や、質を良くするための評価の見直しがされていましたね。慢性期を決して軽視するわけではございませんが、やはり急性期医療の方が日々の労働環境の過酷さや、求められる医療レベルが高いのが現実です。医療レベルに応じて、しっかりとした報酬が得られ、報酬をもとにより良い医療環境を作っていく。そして患者様へ更に質の高い医療サービスを提供するといったサイクルができることが、急性期医療を充実させるために必要となっていきますね。

 

この記事を書いた人


坂本 裕紀
経歴 / 看護大学卒業。OP室、ICU及びHCU、離島医療、訪問診療、訪問看護、クリニック立ち上げを経験し、現職。
資格 / 看護師、保健師、上級心理カウンセラー