5月に入り、ゴールデンウィークも明けましたが、皆様ゴールデンウィークは満喫されましたでしょうか。新型コロナウィルス感染症も2類から5類へと引き下げが実施され、今後様々な活動の制限が緩和されていくと思います。しかし、新型コロナウィルス感染症がなくなったわけではありません。政府からの制限が緩和された今こそ、個々のモラルが非常に大事になってきます。周りの人、そして自分の身を守るためにも必要時感染症対策はしっかり実施していきましょう。
さて、今回は令和4年度診療報酬改定の中でも、[個別改定事項Ⅳ-質の高い精神医療の評価 ①入院に関わる精神医療の評価]というカテゴリーにおいて、簡単ではありますが、少しご紹介をさせていただこうと思います。
【主な内容】
- 精神医療とは
- 精神科救急医療体制の整備の推進
- 精神科救急医療体制の整備の推進等
- 摂食障害入院医療管理加算及び精神科身体合併症管理加算の見直し
- 救命救急医療における自殺企図患者等に対する治療等に係る評価の見直し
・精神科救急医療に係る入院についての評価の見直し
・入院期間に応じた区分の見直し
・病床数上限の見直し
・精神科救急/合併症入院料の見直し
・精神科急性期医師配置加算の施設基準の見直し
・精神科救急医療に係る入院の算定対象
・精神科急性期病棟等におけるクロザピンの普及推進
・摂食障害入院医療管理加算の実績要件の見直し
・精神科身体合併床管理加算の対象患者の見直し
・精神疾患診断治療初回加算等の新設
過去の診療報酬改定に関するブログはコチラ
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅲ がん・疾病・難病対策の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅲ(小児・周産期)~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅱ-慢性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅱ-回復期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅰ-高度急性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅰ-急性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~外来Ⅱ編~
令和4年度診療報酬改定とは?~外来Ⅰ編~
令和4年度診療報酬改定とは?~訪問看護編~
令和4年度診療報酬改定とは?~在宅医療編~
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療②~
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療①~
◇精神医療とは
精神疾患や精神障害、神経症、心身症などの診断と治療を専門的に行い、患者のこころの状態を把握して、薬物療法や心理社会的治療、精神療法などを行う医療となります。
◇精神科救急医療体制の整備の推進
〇精神科救急医療に係る入院についての評価の見直し
精神科救急入院料が、精神科救急急性期医療入院料となり、手厚い救急急性期医療体制、緊急の患者に対応する体制及び医師の配置等がそれぞれ新たに評価されるようになりました。また、精神科救急及び急性期医療における役割に応じた評価体系となり、精神科救急急性期に係る入院料の評価を、入院期間に応じた3区分に見直しが行われました。長くなってしまうため、点数や算定要件などは割愛させていただきます。
〇入院期間に応じた区分の見直し
合併症や急性期に係る入院料の評価が、入院期間に応じた3区分に見直されました。精神科急性期治療病棟入院料1では30日以内:2000点,31日以上60日以内:1700点,61日以上90日以内:1500点となっており、精神科急性期治療病棟入院料2では30日以内:1885点,3以1日以上60日以内:1600点,61日以上90日以内:1450点、精神科救急・合併症入院料では30日以内:3600点,31日以上60日以内:3300点,61日以上90日以内:3100点となっております。こちらは全て一日つき算定できます。
〇病床数上限の見直し
施設基準に関して、精神科救急や急性期医療に係る病棟の病床数についての上限の見直しが行われました。例えば、精神科救急急性期医療入院料の場合、当該保険医療機関における精神科救急急性期医療入院料又は精神科急性期治療病棟入院料を算定する病床数の合計が300床以下となりました。
〇精神科救急・合併症入院料の見直し
精神科身体合併症管理加算や心大血管疾患リハビリテーション料等が包括評価の範囲から除外されました。また、指定医の配置、時間外、休日・深夜における外来診療件数、地域の入院需要に対する要件が見直されました。具体的には、病棟に常勤の指定医が3名以上から2名以上配置されていることへと変更となり、新規入院患者のうち、原則として4分の1以上又は20件以上の患者を当該病棟において受けて入れていることと明記されていたものが、原則として4分の1以上又は5件以上の患者を当該病棟において受け入れていることへと変更となりました。
〇精神科急性期医師配置加算の施設基準の見直し
加算の対象となる病棟として、精神科救急急性期医療入院料が加わり、2のロ:精神科急性期治療病棟1の点数が450点、3:精神科救急急性期医療入院料又は精神科急性期治療病棟入院料1の点数が400点へと引き下げられました。
◇精神科救急医療体制の整備の推進等
〇精神科救急医療に係る入院の算定対象
精神科救急医療体制加算の留意事項に変更が見直されました。具体的には、ア項が認知症を除く症状性を含む器質性精神障害(精神症状を有する状態に限る。)(ただし、令和6年3月31日までの間は、精神症状を有する状態に限り、認知症を含むものとする。)となり、エ項が気分(感情)障害(躁状態又は自殺・自傷行為及び栄養障害・脱水等の生命的危険を伴う状態に限る。)へと変更になりました。
〇精神科急性期病棟等におけるクロザピンの普及推進
クロザピンの普及推進のため、クロザピンの新規導入患者について、当該保険医療機関の他の病院から転院する場合であっても、精神科救急急性期医療入院料、精神科急性期治療病棟入院料及び精神科救急・合併症入院料が算定できるように見直されました。
◇摂食障害入院医療管理加算及び精神科身体合併症管理加算の見直し
〇摂食障害入院医療管理加算の実績要件の見直し
摂食障害入院医療管理加算の実績要件における摂食障害の年間新規入院患者数についての緩和が実施されました。具体的に、以前までは摂食障害の年間新規入院患者数(入院期間が通算される再入院の場合を除く。)が10人以上である必要があったものが、1人以上であることへと緩和されました。
〇精神科身体合併症管理加算の対象患者の見直し
精神科身体合併症管理加算の対象患者のうち、重篤な栄養障害の患者の範囲について緩和が実施されました。具体的には、重篤な栄養障害(Body Mass Index13未満の摂食障害)だったものが、Body Mass Index15未満の摂食障害へと緩和
となりました。
◇救命救急医療における自殺企図患者等に対する治療等に係る評価の見直し
〇精神疾患診断治療初回加算等の新設
救命救急入院料を算定する自殺企図等の重篤な精神疾患患者に対して、当該患者の指導に係る一定の要件を満たした上で届出を行った保険医療機関が治療等を行った場合の評価を新設するとともに、当該患者に対し、生活上の課題等の確認及び退院に向けたアセスメントを行った場合の更なる評価が新設されました。具体的な算定要件は割愛させていただきますが、施設基準に適合している場合は7000点、それ以外の場合は3000点が最初の診療時に限り加算できるようになりました。また、施設基準に適合している場合であって、当該患者に対し、生活上の課題又は精神疾患の治療継続上の課題を確認し、助言又は指導を行った場合は、当該患者の退院時に1回に限り、2500点をさらに所定点数に加算することができるようになりました。
終わりに
今回は[個別改定事項Ⅳ-質の高い精神医療の評価 ①入院に関わる精神医療の評価]のカテゴリーにおいて、令4年度診療報酬改定のお話をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
精神科は、医療分野の中でも特殊な科になります。こころの病気と言えば、うつ病を想定される方が多いと思いますが、それだけでなく、身体に症状が現れてくるものあります。精神疾患の種類を少し挙げると、うつ病、不安障害、睡眠障害、統合失調症、薬物障害、摂食障害等があります。そして、同じ病名だったとしても、子供、若者、大人、男性、女性などによって、症状の出方や、ケア及び治療の仕方などが変わってくることも多々あります。同じ疾患でも多角的視点で身体状態並びに精神状態を把握していかなければならない、非常に繊細な医療分野と言えるでしょう。(S)
この記事を書いた人

坂本 裕紀
経歴 / 看護大学卒業。OP室、ICU及びHCU、離島医療、訪問診療、訪問看護、クリニック立ち上げを経験し、現職。
資格 / 看護師、保健師、上級心理カウンセラー
