4月に入り、新年度がついにスタートしましたね。年度の始まりは、新たなスタート地点に立つ期待と不安が入り混じっています。重要になるのは自身のマインドです。良いスタートを切るためにも、ポジティブシンキングを忘れずに頑張っていきたいですね。
 さて、今回は令和4年度診療報酬改定の中でも、[個別改定事項Ⅲ-がん・疾病・難病対策の評価]というカテゴリーにおいて、簡単ではありますが、少しご紹介をさせていただこうと思います。

【主な内容】

  • がんとは
  • 難病とは
  • がん患者の心理的不安を軽減するための体制の充実
  • がんゲノムプロファイリング検査等の見直し
  • 悪性腫瘍の治療における安心・安全な外来化学療法の評価の新設
  • 放射線治療病室管理加算の見直し
  • 外来化学療法に係る栄養管理の充実
  • 指定難病の診断に必要な遺伝学的検査の評価
  • 遺伝カウンセリングの見直し
  • 知的障害を有するてんかん患者の診療に係る遠隔連携診療料の見直し
  • 難病患者又はてんかん患者の診療における医療機関間の情報共有・連携の推進
  • 生体移植時における適切な検査の実施

過去の診療報酬改定に関するブログはコチラ

令和4年度診療報酬改定に関して~個別改定事項Ⅲ(小児・周産期)~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅱ-慢性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅱ-回復期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅰ-高度急性期入院医療の評価編~
令和4年度診療報酬改定に関して~入院Ⅰ-急性期入院医療の評価編~
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令和4年度診療報酬改定とは?~外来Ⅰ編~
令和4年度診療報酬改定とは?~訪問看護編~
令和4年度診療報酬改定とは?~在宅医療編~
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療②~
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療①~

◇‘がん’とは

 がん(悪性腫瘍)とは、腫瘍のうち、無秩序に増殖しながら周囲に染み出るように広がったり、体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったりするもののことを言います。また、このがんは、発生した場所によって癌腫や肉腫、血液がんなどの種類に分類されます。

◇‘難病’とは

 難病とは、国が治療や研究を進めている希少な難治性の疾患のことを指します。難病の定義としては、難病法にておいて、「発病の機構(原因)が明らかでないこと」「治療方法が確立していない希少な疾病」「当該疾病にかかることにより、長期にわたり療養を必要とすること」と定められています。

◇がん患者の心理的不安を軽減するための体制の充実

 がん患者指導管理料の算定要件の見直しとして、がん患者指導管理料イについて、末期の悪性腫瘍の患者に対して、当該患者の診療方針等に関する意思決定支援を実施した場合にも算定可能とするとともに、医療機関が適切な意思決定支援に係る指針を作成していることを要件とするようになりました。
 がん患者指導管理料の職種要件の見直しとして、がん患者の心理的苦痛の緩和を図る観点から、がん患者指導管理料における職種要件が見直され、要件に公認心理士が追加されました。

◇がんゲノムプロファイリング検査等の見直し

 がんゲノムプロファイリング検査を適切に推進する観点から、当該検査の実態に即して評価の在り方を見直し、検査結果の解釈・説明等の評価としてがんゲノムプロファイリング評価提供料が新設されました。具体的な算定要件は割愛させていただきますが、12,000点を患者一人につき一回算定できます。
 また無菌製剤処理量の対象施設の見直しが行われ、質の高い無菌製剤処理の適切な評価を推進する観点から、無菌製剤処理料の対象となる施設に診療所が追加となりました。

◇悪性腫瘍の治療における安心・安全な外来化学療法の評価の新設

 悪性腫瘍の患者に対する外来における安心・安全な化学療法の実施を推進する観点から、必要な診療体制を整備した上で外来化学療法を実施する場合の評価の新設がなされました。具体的には外来腫瘍化学療法診療料1と2が新設され、点数として外来腫瘍化学療法診療料1では(イ)抗悪性腫瘍剤を投与した場合:700点,(ロ)抗悪性腫瘍剤の投与その他必要な治療管理を行った場合:400点、外来腫瘍化学療法診療料2では(イ)抗悪性腫瘍剤を投与した場合:570点,(ロ)抗悪性腫瘍剤の投与その他必要な治療管理を行った場合:270点となっています。また15歳未満の小児の場合に関しては、各々の点数に200点が加算されます。算定要件及び施設基準に関しては長くなってしまうためここでは割愛させていただきます。

◇放射線治療病室管理加算の見直し

 放射線治療病室管理加算について、治療用放射線同位元素又は密封小線源による治療が行われた患者に対する放射線治療病室管理をそれぞれ評価するとともに、放射線治療病室に係る施設基準が各々に対して設けられています。具体的な算定要件及び施設基準は割愛させていただきますが、治療放射線同位元素による治療の場合は6370点を、密封小線源による治療の場合は2200点を1日につき加算できるようになっています。

◇外来化学療法に係る栄養管理の充実

 外来化学療法を実施するがん患者の治療において、専門的な知識を有する管理栄養士が患者の状態に応じた質の高い指導を実施した場合について評価が見直されました。改定後の算定要件は、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、外来化学療法を実施している悪性腫瘍の患者に対して、医師の指示に基づき当該保険医療機関の専門的な知識を有する管理栄養士が具体的な献立等によって指導を行った場合に限り、月1回に限り260点を算定するとなっています。

◇指定難病の診断に必要な遺伝学的検査の評価

 難病患者に対する診断のための検査を充実させる観点から、診断にあたり遺伝学的検査の実施が必須とされる指定難病であって、分析的妥当性が関係学会等により確認されたものについて、遺伝学的検査の対象疾患に追加されました(53疾患)。具体的な振り分けについては厚生労働省のHPを閲覧していただければと思います。

◇遺伝カウンセリングの見直し

 難病領域において、個別の疾患の診断・治療に関する知識等を有する医師が必ずしも十分には存在しないことを踏まえ、遺伝カウンセリング加算について、患者に対面診療を行う医師と当該疾患に関する十分な知識等を有する医師が連携し、情報通信機器を用いて遺伝カウンセリングを実施した場合も算定可能となりました。

◇知的障害を有するてんかん患者の診療に係る遠隔連携診療料の見直し

 遠隔連携診療料の対象患者に、知的障害を有するてんかん患者が含まれることを明確化し、知的障害を有するてんかん患者について、かかりつけ医とてんかん診療拠点病院等の医師が連携して当該患者に対する診療を継続する場合の評価が新設されました。新設に伴い、遠隔連携診療料が1と2に分けられ、1[診断を目的とする場合]:750点,2[その他の場合]:500点が3月に1回に限り算定できるようになっています。

◇難病患者又はてんかん患者の診療における医療機関間の情報共有・連携の推進

 地域の診療所等が、指定難病患者又はてんかん患者(当該疾病が疑われる患者を含む。)を専門の医療機関に紹介し、紹介先の医療機関においても継続的に当該患者に対する診療を行う場合であって、紹介元の診療所等からの求めに応じて、診療情報を提供した場合の評価として、連携強化診療情報提供料が新設されました。患者1人につき月1回に限り150点を算定できるようになっています。

◇生体移植時における適切な検査の実施

 HTLV-1陽性患者の生体移植後において、指定難病であるHTLV-1関連脊髄症の発症リスクが高いとの報告を踏まえ、HTLV-1核酸検出の要件及び生体移植時における臓器等提供者に係る感染症検査の取り扱いが見直されました。簡潔に記載すると、[微生物核酸同定・定量検査]の算定要件の中に、「移植者」が追加され、[第10部 手術]の算定要件(2)臓器提供者に係る感染症検査の中に、もともとあったHTLV-1抗体に追加してHTLV-1関連の検査項目が新しく追加されています。

終わりに

 今回は[個別改定事項Ⅲ-がん・疾病・難病対策の評価]のカテゴリーにおいて、令4年度診療報酬改定のお話をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
 現代では、一生のうちに約2人に1人はがんになり、3人に1人はそのがんで亡くなると言われています。がんという病にかかる方が多くなっていますが、医療の進歩から治るものも増えてきています。早期発見ができればよりその確率は高くなります。自分がもしがんだったらと考えると怖いという気持ちもあると思いますが、日頃から定期的な健康診断をしっかり実施して、自分自身で予防に努めていくことが重要になります。
 難病、それは現代の医学ではどうにもできない疾病です。どれほど注意深く疾患を管理しようとも、症状が変動し、悪化したりしてしまいます。そして、治らないということは、一生付き合っていくしかないということです。難病を抱えた人たちの思いというのは簡単に理解できるようなものではありません。それでも、少しでも理解しようと寄り添うことがその人を救う第一歩になるかもしれません。私も、一人の医療従事者として、その人がその人らしく生きていけるよう、支援に努めていけたらと思っております。(S)

 

この記事を書いた人


坂本 裕紀
経歴 / 看護大学卒業。OP室、ICU及びHCU、離島医療、訪問診療、訪問看護、クリニック立ち上げを経験し、現職。
資格 / 看護師、保健師、上級心理カウンセラー