残暑厳しい中、皆様いかがお過ごしでしょうか。少しずつですがコロナの感染者数も減少してきており、ピークアウトしてきましたね。しかし、これからの季節はインフルエンザとコロナの重複感染も懸念されてきますので、引き続き感染対策を怠らずにしていきましょう。
さて、今回は令和4年度診療報酬改定の中でも、[外来Ⅰ]というカテゴリーにおいて、簡単ではありますが、少しご紹介をさせていただこうと思います。
過去の診療報酬改定シリーズはこちらからどうぞ
令和4年度診療報酬改定とは?(訪問看護編)
令和4年度診療報酬改定とは?(在宅医療編)
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療②~
令和4年度診療報酬改定とは?~情報通信機器を用いた診療①~
【主な内容】
- 外来とは
- 外来機能分化の推進
- リフィル処方の仕組み
- 電子的保健医療情報活用の評価
◇外来とは
外来とは、入院せずに、病院に通って診察を受けること、またはその場所のことを指します。外来というのは、病院でも、クリニックでも呼称は変わりません。よく外来患者と言いますが、これはすなわち入院していない患者のことを指します。
◇外来機能分化の推進
紹介状なしで受診する場合等の定額負担の見直しとして、外来機能の明確化及び医療機関間の連携を推進する観点から、紹介状なしで受診した患者様等から定額負担を徴収する責務がある医療機関の対象範囲を見直すとともに、当該医療機関における定額負担の対象患者について、その診療に係る保険給付範囲及び定額負担の額等が改定されました。
対象病院には、紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上に限る)が追加され、定額負担の額は医科初診が7000円、歯科初診が5000円へ増額、医科再診が3000円、歯科再診が1900円へ増額となっています。また外来機能明確化のための例外的・限定的な取扱いとして、定額負担を求める患者(あえて紹介状なしで受診する患者様等)の初診・再診について、医科及び歯科ともに初診200点、医科再診50点、歯科再診40点が保険給付範囲からの控除となりました。
対象患者に関しては、①から⑩まである項目のうち、初診の場合は①が[自施設の他の診療科を受診している患者]から[自施設の他の診療科から院内紹介されて受診する患者]へ要件が変更となり、⑩は初再診ともに[その他、保険医療機関が当該保険医療機関を直接受診する必要性を特に認めた患者]という文言に、(※急を要しない時間外の受診、単なる予約受診等、患者の都合により受診する場合は認められない)という文言が追加となっています。また、再診の場合、定額負担の対象患者、他の病院等に対して文書による紹介を行う旨の申出を行ったのにもかかわらず、当該医療機関を受診した患者であり、現行制度における①、②、③、⑥、⑦に該当する場合は想定されえないため、要件から削除となっています。上記に関しては令和4年10月1日から施行及び適用予定となっております。
次に、紹介受診重点医療機関における入院診療の評価の新設が実施されました。内容としては、紹介受診重点医療機関において、入院機能の強化や勤務医の外来負担の軽減等が推進され、入院医療の質が向上することを踏まえ、当該入院医療について紹介受診重点医療機関入院診療加算が新設されました。詳しい算定要件に関しては割愛させていただきますが、点数は800点であり、入院初日のみの適用となっています。
また、初診料及び外来診療料における紹介・逆紹介割合に基づく減算規定の見直しとして、外来機能の明確化及び医療機関間の連携を推進する観点から、紹介患者・逆紹介患者の受診割合が低い特定機能病院等を紹介状なしで受診した患者等に係る初診料・外来診療料に関して、対象病院に一般病床の数が200床以上の紹介受診重点医療機関が追加となり、紹介率及び逆紹介率についての算出方法と項目の定義及び基準が改定されています。詳しい算出方法に関しては長くなってしまうため今回は割愛させていただきます。
◇リフィル処方の仕組み
今回の診療報酬改定にて、処方箋様式の見直しが実施されました。内容としては、症状が安定している患者様に対して医師の処方により医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できるリフィル処方箋の仕組みが設けられました。リフィル処方箋を使用した場合の処方箋料ですが、当該処方箋の一回の使用による投与期間が29日以内の投薬を行った場合は、処方箋料における長期投薬に係る減算規定を適用しないこととすると定められました。
◇電子的保険医療情報活用の評価
オンライン資格確認システムを通じた患者情報等の活用に係る評価として、電子的保健医療情報活用加算の新設が行われました。内容としては、オンライン資格確認システムを通じて患者の薬剤情報又は特定健診情報等を取得し、当該情報を活用して診療等を実施することに係る評価となっています。点数はそれぞれ、初診料として7点の加算、再診料として4点の加算、外来診療料として4点の加算となっています。
◇まとめ
今回は令和4年度診療報酬改定の中でも、[外来Ⅰ]の分野において記載をさせていただきましたがいかがでしたでしょうか。最後に、今回の題目でも出てきたリフィル処方について焦点を当て、締めさせていただこうと思います。
今年度より、リフィル処方箋というものが実施され、その内容は処方箋を3回まで反復使用できるというものになります。一回目は医師の診察のもと、処方箋が発行されるのですが、二回目及び三回目は、医師の診察なしに処方箋を薬局に出すことで薬を受け取ることができます。勿論、医師が状態的にも安定していて、適切だと判断した患者様のみに勧めるものです。患者様が診察なしで薬を受け取ることができるため、通院時間や待ち時間の削減が図れ、コロナ感染症が猛威を奮っている昨今では、感染対策としても非常にメリットのあるものだと考えられます。しかし、医師の診察が省略されるということは、病態の変化や、内服の過剰服用などといったことが見逃されてしまうリスクも大いにあります。そういったリスクを見逃さないためにも、薬局や薬剤師との医療連携を密にしていくことが、今後このリフィル処方箋を普及していくための重要な課題となると考えられます。
私が赴いているクリニックにおいても、患者様から、「いつも飲んでいる薬が欲しいだけなのに、なんで診察が必要なの?」という声を聴くことがしばしばあります。確かに、そういった患者様の声に耳を傾け、医療サービスの利便性を上げるということも大事ではありますが、それ以上に大事なのは患者様の命を守るということです。患者様の声に耳を傾けることが、必ずしも患者様の命を守るということに繋がるとは限らず、その結果誤った医療を提供してしまっては元も子もありません。患者様に安全な医療サービスを受けていただくことが、医療の最も基本的な要件であります。そのため、患者様が安心して、安全な医療を受けられるような医療サービスの向上に努めていきたいですね。
この記事を書いた人

坂本 裕紀
経歴 / 看護大学卒業。OP室、ICU及びHCU、離島医療、訪問診療、訪問看護、クリニック立ち上げを経験し、現職。
資格 / 看護師、保健師、上級心理カウンセラー
