6月も下旬となり今年もあっという間に半年が過ぎました。梅雨の候、どんよりとした天気が続いておりますが、そんな気候にも負けないよう、健康第一に毎日を過ごしていきましょう。
さて、今回は私が訪問看護ステーションの立ち上げに一年間関わった時のお話を少しさせていただければと思います。今後立ち上げを考えている方の参考に、そして現在訪問看護に関わられている方には、「うんうん。」と共感を得ていただければ幸いと思っております。
【主な内容】
・訪問看護とは
・立ち上げ
・営業
・レセプト業務
◇訪問看護とは
はじめに、訪問看護というサービスについて少しお話をさせていただこうと思います。訪問看護とは、看護師がご利用者様のお宅に訪問し、その方の病気や障害に応じた看護を行うサービスのことを指します。主治医の先生の指示があれば、病院で行うような医療処置も実施させていただき、健康状態の増悪防止や、回復に向けて在宅での支援をします。もう少し詳しく書くと、バイタルサインの観察から、療養生活の相談とアドバイス、リハビリテーション、点滴や注射などの医療処置、疼痛管理や服薬管理、緊急時の対応、主治医・ケアマネージャー・薬剤師・歯科医師等との連携などを実施していきます。
そして、訪問看護を主に提供しているのが、訪問看護ステーションです。訪問看護ステーションは、保健師または看護師が管理者となって運営する事業所であり、看護師・准看護師・保健師・助産師などが主に所属しています。また、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が所属し、看護師に代わってリハビリテーションを実施する場合もあります。訪問看護ステーションは、ご利用者様の主治医の所属機関を問わず、訪問看護指示書の交付によってサービスを提供する地域に開かれた独立した事業所となります。保険医療機関ではないですが、介護保険や医療保険を使用してサービスを受けることができます。
◇立ち上げ
私が関わらせていただいた事業所は、他に介護タクシーや訪問介護、居宅支援事業所を既に持っている会社が運営し、最後のピースとして訪問看護事業の発足に至った事業所でした。しかし、管理者を含め誰一人として訪問看護ステーションの立ち上げは疎か、訪問看護ステーションで勤務した経験がないスタッフしかいませんでした。そういった中、自分たちで立ち上げ、運営していくため必要なものを、他のステーション等を参考にしながら見様見真似で揃えていきました。医療物品はもちろんのこと、移動に使用する車の駐車許可証や、営業で自分たちを売り込むためのパンフレット(自作)なども自分たちで揃えました。そういった準備と並行して、自分たちが看護師としてどういったご利用者様を看れるのか、自分たちの強みは何なのか、訪問エリアはどこまでにするのか、どういった訪問看護ステーションにしていきたいのかなど、管理者を含めスタッフ同士で話し合い、少しずつステーションの形を作っていきました。
◇営業
訪問看護ステーションを運営していくためには、ご利用者様がいなければ話になりません。そして、ご利用者様を紹介していただくには、病院や他の訪問看護ステーション、そしてケアマネージャーへの営業が必要不可欠となります。そういった中、勿論、私たち看護スタッフの中に営業経験のあるスタッフはいませんでした。
営業の方法は疎か、営業マナーや営業とはどういったものなのかも分かっていないスタッフが、一から病院や他の訪問看護ステーション、ケアマネージャーへ自分たちを売り込みに行くのです。本当にご利用者様を紹介していただけるのか、もしご利用者様がこなかったらどうしようなど、心中は不安でいっぱいでした。そういった状況でも、自分たちができることを誠心誠意お伝えし、パンフレットを配り、真夏の猛暑日が続く中必死で何件も何件も営業に回りました。一度訪れた事業所でも、自分たちの名前が忘れられてしまわないよう、前回とは違うパンフレットを用意して一か月後には再訪問することを徹底しました。その結果、営業を始めて二か月後くらいから、少しずつ、本当に少しずつご利用者様の紹介が入りはじめ、訪問看護師として活動することができるようになっていきました。
◇レセプト業務
訪問看護ステーションが収益をあげるために、必ずやらなければならないことがあります。それがレセプト業務です。ここで詳しくは記載しませんが、訪問看護ステーションで実施するレセプト業務は、訪問看護ステーションがご利用者様にサービスを提供した報酬として、介護報酬や訪問看護療養費を請求するものとなります。勿論、私たち看護スタッフの中には誰も訪問看護のレセプトシステムを触ったことのあるメンバーはいなかったため、PCでの入力の仕方や基本的なルールはもちろん、療養費や加算の種類などを独学で勉強し、分からないところは国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬基金、日本訪問看護財団等に問い合わせてレセプト業務に取り組んでいました。スタッフの中では、自分が一番システム関係に強かったため、主に自分がサービス実績の入力やレセプト入力を担当していましたが、介護保険と医療保険の違いや、加算の種類、公費の入力など最初は何が正解なのかも分からず、請求したものが返戻として戻ってくることもあり、毎月初旬は頭を悩ませることが多かったです。それでも、自分たちがご利用者様に提供した訪問看護というサービスが、介護報酬、訪問看護療養費という対価として得られることに嬉しさと達成感を感じながら毎月のレセプト業務に励んでいました。
◇終わりに
今回は、「立ち上げ」という部分に焦点を当てて、私が印象に残っていることを記載させていただきました。看護という観点からも、お話したいことはたくさんあるのですが、量が多くなってしまうためまた別の機会に載せさせていただければと思います。何もかもが初めての経験で、辛かったことや、苦しかったことなどは多くあります。しかし、それらを上回るくらいの知識や経験を得ることができ、訪問看護というサービスの重要性や、素晴らしさも知ることができました。
現在、訪問看護師は全国的に見て人手不足にある状況です。その理由には、業務量の多さや、現場の過酷さがあるからだと考えられます。これから訪問看護という現場に飛び込もうとしている方、間違いなく多くの苦労をされると思います。それでも、是非一度挑戦してみていただくことをお勧めします。辛く苦しいだけではない、訪問看護だからこそ味わえる経験と楽しさがそこにはあります。(S)
