地域の経済や雇用を支えている中小企業ですが、近年は後継者が見つからないことで事業が好調でも廃業を選択せざるを得ない企業が多い状況です。
その廃業を救う打ち手として事業承継が注目されている昨今ですが、一方で事業拡大のために事業承継を活用するというケースも増えてきています。

今回は譲受側として事業承継を理解しておくポイントについてお話ししたいと思います。
事業承継はよく「お見合い」に例えられます。
事業承継のプロセスは結婚相手にふさわしいかどうかを見定める期間であり、最終合意は「結婚」をイメージしてもらえると分かりやすいかと思います。そうすると我々専門家は「仲人」という立場になります。

  • 事業承継で会社を「買う」メリット・デメリット
  • 譲受側の事業承継の流れ
  • コロナ禍での事業承継
  • 注意する点

事業承継で会社を「買う」メリット・デメリット

事業承継で会社を「買う」メリット

会社を事業承継で買うメリットは様々ありますが、「時間」と「ノウハウ」の獲得がメリットとして大きく挙げられます。
時間:市場環境分析から競合店舗との差別化、人材確保、許可申請手続き、集客etc..時間が必要な作業に対して、事業承継はこれを1度に獲得する事が可能
ノウハウ:企業の強みや地域特性・取引先との関係、企業ブランドに紐づいた付加価値を1度に獲得する事が可能
事業承継は経営ノウハウも社員も取引先もすべてそろっている事業を買う事になります。いわば完成されたビジネスをそのまま譲り受けるわけですから、最終合意した翌日から新しいビジネスをしかも収益が上がるビジネスを展開する事が可能なわけです。この点が事業承継の大きなメリットとして挙げられます。

事業承継で会社を「買う」デメリット

メリットの裏返しになりますが、既に確立された事業体を譲り受ける訳ですから、譲受経営者が一から作り上げていきたい企業像とはピッタリと一致しないという事を理解しておくことが大切です。

  • 譲渡企業の企業風土が譲受企業と違う
  • 雇用形態が違う
  • 組織体制が違う
  • 働き方が違う 等々

重要なのは、今の譲渡企業の現状が譲受経営者から見て魅力であるか、その魅力にプラスアルファで譲受企業のノウハウを融合させることで相乗効果が得られるかどうかを検討する事であり、理想を追い求めるだけの事業承継(結婚)は失敗する可能性が高いという事です。

譲受側の事業承継の流れ

現在の事業承継はオフラインとオンラインの流れがあります。オフラインは「人」がつなぐもの、オンラインは「インターネット」がつなぐ事業承継というものです。弊社も現在はインターネットプラットフォームを活用したアドバイスを行っております。
ここではインターネットを活用し専門家を仲介役とした譲受側事業承継の流れについて簡単にご説明します。
①インターネットプラットフォームで譲渡企業情報収集
譲受経営者が希望する事業が募集されていないか確認する。お見合い相談所に相談するイメージです。
②関心がある譲渡企業へ実名開示依頼
気になる譲渡企業があったら、面談(お見合い)を専門家に(仲人)申し込みます。
③譲渡企業経営者と面談
専門家が調整して譲渡経営者と譲受経営者のトップ面談(お見合い)を開催します。
④基本合意
専門家は譲渡経営者・譲受経営者から引き続き話を進めたい旨の意思表明を受諾した場合、両者に対して基本合意契約を締結します。これは、最終合意(結婚)に向けて2社が独占的に交渉していく事を明記したものになります。
⑤企業監査
譲渡企業に対して、譲受経営者が企業価値・実態を調査する為に専門家を活用して調査を行います。いうなれば、結婚相手にふさわしい相手かどうか興信所を使って調べるようなイメージです(※譲渡経営者に調査する意思表明したうえでの監査ですので、秘密裏での作業ではありません)。
⑥最終合意
事業承継するにあたり、諸条件(譲渡価額、引き継ぐ内容等)が合意出来ましたら最終契約書(婚姻届け)に捺印して、譲渡金額の受け渡しをもって完了です。

※上記の他、譲渡側・譲受側双方に専門家を擁立する手法もあります。

コロナ禍での事業承継

には、対人接触することなくビジネスを展開するという事で、オンラインツールを活用した交渉形態が一気に浸透しました。事業承継事業についても同様です。
上記でご説明した①~③についてオンラインで進める事が可能になり、これにより遠隔地(例えば、岩手県の譲渡企業を鹿児島県の譲受企業が買収)の企業が結婚できる可能性とスピードが上がりました。
具体的には、譲渡経営者へのインタビューと施設状況を動画にて撮影してオンラインにて共有する事で現地訪問せずに状況理解が促進される事、従業員との遭遇回避で情報漏洩リスクが低減されました。

注意点

コロナ禍の元、オンラインミーティングツールの出現でオンラインツールでのマッチングと交渉進捗のスピードは著しく向上しました。ただ、便利になったからと言って、リスクも減少したという事ではありません。ここでは事業承継を進めていく中で全般において注意したい点をご説明します。

情報漏洩

交渉を進めていくうえでは情報漏洩のリスクは常に注意を払う事が重要です。
事業承継を進めているという情報が出回るだけで、交渉が失敗に終わるリスクは格段に高まります。
理由は事業承継というものがステークホルダーにとってはネガティブな情報として受け止められるからです。
例えば、譲渡企業の従業員に情報が漏れたらどうなると思いますか?恐らく「解雇される」という間違ったイメージのもと退職するかもしれません。
取引先に漏れたらどうでしょう?倒産するかもしれないと思われ早期の資金回収を実施するかもしれません。
そうなると、資金繰り計画が狂い当初予定から大幅に修正しなければならないかもしれません。また、うわさがうわさを呼びより取引縮小等事業に悪影響を及ぼすかもしれません。
そういう事態を引き起こさない為にも、情報の取り扱いは最後まで慎重に行わなければなりません。

専門家

オンラインツールの普及で交渉事やヒアリングについても遠隔から気軽に出来る事が可能になりました。ですが譲渡・譲受経営者双方にとって事業承継というものは非常に重い意思決定であります。
中小企業においては譲渡経営者からすればこれまで手塩に育ててきた会社を手放す事ですし、譲受経営者にしても限りある資金の中に金融機関からの資金調達を経て実行するなど重い決断に迫られると思います。
その為納得するお取引をするためには大小様々な疑問点、不安点が噴出しそれをその都度適切に解決したいと思うのが常です。そのような経営者の様々なお悩みを迅速にかつ納得がいく対応をしてくれる専門家を選定出来るかどうかが非常に重要になってきます。
専門家の事業承継報酬料金は企業によって様々ですが現在はレーマン方式を採用した専門家が多く、それほど報酬に差はない状況です。
その為、専門家選びはどれだけお客様に対してきめ細かく対応して頂けるか、困ったらすぐに来てくれるか、地域性をしっかりと理解してくれているかなど、譲渡・譲受経営者と常に伴走してくれるのか?の視点から検討する事が大切になってきます。

まとめ

今回は、譲受側が事業承継について理解しておくことについてご説明しました。
注意点では譲渡側・譲受側共に共通する事を記載しましたが、事業承継は人間味あふれる取引だと思います。
だからこそ納得がいくまで膝をつき合わせた話し合い・交渉対応が必要です。
このほか、事業承継後の事業活動(結婚生活)をどのようにしていくかや注意するべき点などやるべき事項は多岐に渡ります。
事業承継に関する事や経営に関することなど疑問に思ったことはお気軽にお問い合わせ下さい。スタッフが丁寧にご説明させて頂きます。