6月に入り気温も温かくなってきて、木々もすっかり芽吹き、新緑の葉が生い茂る季節となってきました。心地よい風が吹き抜ける立夏の候ではございますが、皆様におかれましては、感染対策を欠かさずにお過ごしいただければと思います。
さて、今回は以前お話させていただいた、令和4年度診療報酬改定に関して(情報通信機器を用いた診療)でご紹介できなかった部分をお話させていただければと思います。もし前回のブログをご覧になっていなければ、4月15日(金)のブログをご覧になってから、こちらを閲覧していただければ幸いです。

【主な内容】
・情報通信機器を用いた在宅管理に係る評価の見直し
・外来栄養食事指導料の要件の見直し
・情報通信機器を用いたカンファレンス等に係る要件の見直し

情報通信機器を用いた在宅管理に係る評価の見直し

今回の改定では、在宅時医学総合管理料ならびに施設入居時医学総合管理料に評価の見直しが入りました。在宅時医学総合管理料とは、在宅患者に対する総合的な医学管理を評価する診療報酬であり、施設入居時医学総合管理料とは、施設入居患者に対する総合的な医学管理を評価する診療報酬になります。

在宅時医学総合管理料においては、訪問による対面診療と情報通信機器を用いた診療(以下、オンライン診療)を組み合わせて実施した場合の評価を新設するとともに、オンライン在宅管理料の廃止がなされました。また、事前の対面診療期間が3ヵ月とされていたものが廃止。オンライン診療を行える医師も、今までは同一の保険医療機関に所属する5人以下のチームで診療を行っている場合と制限がありましたが、今回の改定にてその人数制限が撤廃されました。施設入居時等医学総合管理料については、訪問による対面診療とオンライン診療を組み合わせて実施した場合の評価が新設されました。

令和3年度まで、算定要件は月1回以上の訪問診療を行っている場合に算定でき、その点数はどういった条件下においても、一律100点と低めに設定されていました。しかし今回の改定で、機能強化型なのか、病床があるのか、在宅療養支援診療所(以下、在支診)もしくは在宅療養支援病院(以下、在支病)なのかという施設基準及び、単一建物における診療患者数、また月2回以上訪問の患者様にオンライン診療を用いる場合と、月1回訪問の患者様にオンライン診療を用いる場合でそれぞれ点数に差がつきました。例えば、機能強化型在支診及び在支病で、単一建物診療患者数が1人の場合、月2回以上訪問のうち1回はオンライン診療を用いた診療を行う場合は3029点、月1回訪問で2月目はオンライン診療を行う場合は1515点と、以前の一律設定より大幅に点数が引き上げられました。今回の点数の引き上げにより、訪問診療においてもオンライン診療の導入が現実的になってきました。

外来栄養食事指導料の要件の見直し

外来栄養食事指導料とは、医師の指示にて、管理栄養士が患者ごとに作成した食事計画案などに基づき指導を行った場合に算定できる診療報酬になります。また指導料にはⅠとⅡがあり、当該保険医療機関に所属している管理栄養士が指導する場合にはⅠの算定、当該保険医療機関以外(連携医療機関等)の管理栄養士が指導する場合にはⅡの算定となります。

今回の改定にて、外来栄養食事指導料Ⅰにおいては初回の指導にておいてもオンラインでの算定が認められ、その点数は235点と、対面指導の260点と比較してもその差は25点とかなり高めに設定されました。また外来栄養食事指導料Ⅱにおきましては、今まで初回も2回目以降もオンラインでの指導は認められていませんでしたが、共にオンラインでの算定が認められ、その点数は初回が225点、2回目以降が170点としっかり診療報酬が取れるように設定されました。オンラインでの指導が認められたことによって、患者様側、医療機関側共に時間の確保がしやすくなり、より多くの患者様に栄養指導を実施できるようになりました。

情報通信機器を用いたカンファレンス等に係る要件の見直し

今回の改定にて、医療機関におけるICT(Information and Communication Technology)を活用した業務の効率化及び合理化という点にも焦点が当てられ、医療従事者等により実施されるカンファレンス等について、ビデオ通話が可能な機器を用いて実施する場合の入退院支援加算等の要件の緩和がなされました。

例えば、入退院支援加算の算定要件は原則対面であり、関係者は全員病院等に集まりそのカンファレンスを行う必要がありましたが、改定後はリアルタイムの画像を介したコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な機器を用いて実施しても差し支えないと定められました。また、在宅患者訪問看護・指導料の算定においては、関係者全員が患家に赴き実施することが原則であり、要件を満たす場合のみ関係者のうちいずれかがビデオ通話が可能な機器を用いて参加することができるというものでしたが、改定後は1者以上が患家に赴きカンファレンスを行う場合には、その他の関係者はビデオ通話が可能な機器を用いて参加することができるというように定められました。

まとめ

今回は情報通信機器を用いた診療のカテゴリーの中でも、在宅管理、栄養食事指導、カンファレンス等に関して記載させていただきました。これで、令和4年度診療報酬改定(情報通信機器を用いた診療)に関しては全てご紹介させていただいたことになります。診療だけでなく、指導やカンファレンス等もオンラインで実施することが少しずつ認められ、患者様や医療従事者が遠方にいたとしても容易に行えるようになりました。距離という概念を考えなくてよくなったことは非常に大きなメリットになります。しかし、オンラインでは映像と音声、または音声だけしか判断材料がないため、患者様に起きている重要な兆候や、全身状態といったものを見逃してしまうリスクも大いに考えられます。そういうリスクを踏まえて、オンライン及び対面での診療または指導の使い分けを適切に行う必要がありますね。

オンラインに関しては、今後さらに普及していくことが予想されますので、その良し悪しをしっかりと知識として持ち、活用していくことが重要となっていきますね。上手に活用できれば診療の質の向上、患者様の満足度にも繋がっていきます。在宅診療においてもオンライン診療での診療報酬がしっかりと設定されたので、在宅診療を積極的に行われている先生方におきましては、導入を検討してみてはいかがでしょうか。(S)